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私たちにとって、母語というのはあまりにも当然すぎて、
その奇妙さには私たちはなかなか気づかないものです。

たとえば、英語で「お腹が空いた」は「I'm hungry.」だと習います。
すると、ドイツ語でそれにあたる表現が
「Ich habe Hunger.(空腹を持っている)」だと知ったとき、
「へ~ヘンなの~」と思ったりしてしまいます。
が、よくよく考えると、
日本語だって英語に直訳してみたら「My stomach is empty.」となり、
英語話者にとっては十分にヘンな表現で、
そもそも「お腹が空いた」っておもしろい表現だなと気づくわけです。
が、普段私たちは、そんなことをひとかけらも意識せずに
「お腹空いたー!」と無邪気に言います。

んー、例がわかりにくいような気もする。

または、たとえば、「食パン」なんてのもかなり不思議な表現です。
なんてったって「食パン」、すなわち「食べるパン」としか言っていないのに、
日本語母語話者が「食パン」と言ったら、
100人が100人あの四角い耳付きのサンドイッチに使う白いパンを思い浮かべます。

母語を客観的に見つめるというのはなかなか難しい作業であり、
同時に、うれしい驚きと喜びに満ちた作業でもあります。

私、以前、ザンビアでは「バスを降りるときになぜ"Stay!"と叫ぶのか」
という自分なりの疑問とその答えについて書いたことがありました。
(記事はこちら

それが、それと同じような発見が、まさに母語である日本語にもあったんです。
このうれしさと驚きを、どうしても誰かに伝えたくて。

モハメド・オマル・アブディンさんという、
日本で活躍しているスーダン出身の盲目の研究者がいます。
ポプラ社のサイトでこのアブディンさんが書いている「わが盲想」という連載が
非常におもしろくて、月に1~2度の更新をいつもとても楽しみにしているのですが、
彼がどうやって漢字を覚えたかという件を読んだときのことです。

ある程度、漢字の使い方を覚えてくると、ぼくは初耳の言葉の漢字をあてるのが趣味になっていった。しかし、すべて理屈では説明できないのがまた漢字である。

 「留学」という言葉があるが、それを聞いたとき、ぼくは「流」に「学」だと直感的に思った。だって、自分がいるところから動いてどこかへ学びに行くのだから、きっと流れて学ぶのだろう。だが、現実はそう甘くなかった。「りゅう」は流れるどころか、その反対の「留まる」である。その衝撃的事実を聞いたとき、ぼくは怒りさえ覚えた。

 (なんでとどまるんだ!)

 でも、ぼくの一存で漢字が変更されることはないのだから、事実を受け止めて、どうにかして自分なりにその漢字のイメージを作るしかない。「留学」のような言葉は自分が考えたのとは正反対の漢字であるが、それでもがんばって理屈をつくろうと思った。確かに留学はどこかへいって勉強するのだから、本来「流学」がふさわしいのではないかと思ったが、流れっぱなしでは勉強もできないので、流れ着いた先でしっかり留まらなければ勉強できないんだって、かなり無理してその漢字を正当化することに成功した。その後、どんなに自分がイメージした漢字と違うものを使われても、ぼくはそれを頭の中で整理する作業を楽しめるようになった。一番しっくりくる漢字は「姦(かしま)しい」である。やはり女が3人集まると、そうとう騒々しいのだ。

「わが盲想 第10回 雪の上にも3年 ─後編─」より抜粋)

これ読んだときの衝撃といったら。
「留学」という言葉があまりにもなじみすぎていて、
その漢字と意味がかけ離れているように見えるなんて、
私、考えたこともありませんでした。

そして、私もザンビアで、アブディンさんとまったく同じように、

(なんでとどまるんだ!)

と怒りさえ覚えたのでした。

日本語にこんなにまでも似た例があるのに、
さっぱり気づかずニャンジャ語を不思議がっていた私。
修業がまったく足りません。

ちなみに、自分なりに考えてみた「留学」の定義は、
「(ある一定のところに)(一定期間)留まって(=滞在して)学ぶ」こと。

アブディンさんに、ぜひともありがとうござまいますとお礼を言いたい。
この連載いつまで続くのかな。
ずっとずっと続いてほしい。

連載を一から読みたい人は、バックナンバーのページへどうぞ。
最新の第13回でついにアブディンさんが外語大に入学するところまで来ましたが、
私がこの人のことを知ったのは、何を隠そう私も当時外語大の学生だったからです。
つまりは友人の友人にあたるんですが、
私はアブディンさんと直接お話ししたことはなく、
ひっそりとファンなだけ。

でも、連載読んでは、いつも自分もがんばるぞって元気をもらっています。
誰かアブディンさんと知り合いの私の友だち、
私がファンだって伝えてくれませんかー?
(なんてなんて虫のいい・・・)
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2013.02.25 Mon l 帰国後(つぶやき) l top
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